みなさまこんにちは。2月4日の立春をすぎ、農業暦では「春」が訪れる季節となりましたが、寒い日が続きますね。
今年の冬は全国的にも寒い冬なのでは。例年になく大雪の地方もあるようですし、湘南地域も寒いです。朝の気温が氷点下になることもありました。暖かくしておすごしくださいね。

 さて、竹内庭苑では冬の時期も年間管理のお施主様宅を訪問し、庭木のお手入れを担当しています。
今月は、お手入れの主な工程「剪定」と、造園職人ならではの技術、「松の剪定」について、竹内社長にインタビューしていきます。

-先日、お手入れをしたこちらの御宅。写真一番左端の木は、見た目のスッキリ度合いが目につきますね。葉だけでなく、枝先をだいぶ切り落としているように見えます。

(竹内)剪定には、いくつか種類があります。樹種や目的に合わせて、どの剪定で行うか、対応しています。

-そうなんですね。ただ切り落とすだけではない。細かな部分での完成の違いもありそうですね。

(竹内)剪定の種類は4種類です。
軽剪定/小透かし剪定/通常の剪定/強剪定 です。
まず、【軽剪定】で剪定されるのは、庭木をもっと大きくしたいとき。今後の成長を見込んで、徒長した枝や不要な枝の除去に限って剪定を行います。

-髪の毛でいうと、枝毛部分をそろえるようなイメージでしょうか。では、小透かし剪定はどのような剪定方法でしょうか。軽剪定との違いもありそうですね。

(竹内)【小透かし剪定】は、景観を重視しながら行う剪定です。自然の木漏れ日を演出したいときなどに用いられます。ただ、庭木が大きくなってしまうというデメリットもあります。

―軽剪定は「もっと大きくしたい」という目的に合わせて、細かい部分に手を加えるのに留める印象ですが、小透かし剪定は、大きくしたいわけではなくとも、結果として大きくなってしまうのですね。

(竹内)大きくなりすぎた樹木を極端に小さくする技法が【強剪定】です。樹木を矯正する剪定といえます。
これらの他に、もっとも一般的なのが【通常の剪定】です。美しい景観と樹木の大きさの維持を、剪定で叶えます。

-剪定方法それぞれに効果やデメリットなどもあるのですね。こちらの写真の一番左の大きな木は葉からスッキリされたのが良く分かります。剪定方法は、どちらで行っていますか。

(竹内)通常の剪定で行いました。通常の剪定を行った樹木は、一年で元通りの形になりますが、強剪定をした樹木は通常の剪定をした場合よりも成長は早いです。

-強剪定は、極端に小さくしたい時に行う剪定でしたよね?小さくしたい希望で強めの剪定をしただろうに、通常の剪定を選んだ場合よりも、早くに大きくなってしまっては困るのですが。。。。

(竹内)通常の剪定を行った場合は、庭木は根からの吸水と葉の蒸散作用のバランスを維持して働きますので、一年で元通りになるのです。ですが、強剪定を行った場合は、本来の枝とは違う真っすぐに伸びる枝を発生させてしまいます。「徒長枝」と言います。この枝が通常の枝よりも3倍速く成長し、おまけに真っすぐに伸びるために景観を損なう結果にもなります。

-子どもの頃、実家の木を「小さくしちゃってください」と母が植木屋さんにお願いしていましたが、そんなに小さくなることはありませんでした。後の成長や景観の視点はありませんでした。

(竹内) 景観を損なわずにお庭を管理していくには、最低でも1年に1度は剪定をお勧めしています。樹種に合った適期で剪定を行うことが庭を良い状態に保ちます。適期は樹木によってそれぞれ異なるため定期的な管理(年間管理)がお勧めです。

-一年に1回で全ての庭木を剪定するのではなく、それぞれの庭木ごとに応じた時期で手を加えられると、成長も景観も両方を得られますね。

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-お手入れ先の施主様宅では、松の剪定も行いました。

(竹内)松の剪定は、他の庭木と異なり特殊です。キレイに仕立てて管理するには、年月がかかりますし、熟練した職人でなければ難しいです。

-そうなんですね。造園の職人さんが松の木を剪定している姿は、「絵になる」というか、多くの人にとってもイメージされる姿かと思うのですが、熟練の技が必要なんですね。

(竹内)多くの樹種は、剪定や刈り込みで先端の葉を伐ってしまっても、残った枝から発芽します。ですが、松は、枝先に葉が残っていないと枝が枯れてしまうのです。

-伐り方によっては枝が枯れてしまい、そこから芽が出なくなってしまうということですね。葉を残して伐る。注意が必要になりますね。

(竹内)枝先に葉を残すことに加えて、丁寧に、一つひとつ枝の美観を意識しながらの剪定が必要です。切り落とす剪定とは異なる技法のお手入れも行います。

-勢いよく刈り込んでいくのとは、やはり違う印象ですね。繊細で「職人技」という言葉が思いつきます。どのような技法でしょうか。

(竹内)剪定とは異なる技法としては、春は【ミドリ摘み】を行います。芽のうち、一番勢いがあり成長した芽を春に摘み取ることで、側芽からの幼芽の発芽を促進させます。それにより、芽が全体的に調和のとれた生育につながります。

-一つひとつ手作業で摘むとなると、時間もかかりそうですし、どの芽を摘み取るか、判断も必要でしょうね。

(竹内)冬は幼芽を上手にのこしながら、松葉の【もみ上げ】を行います。手で松葉を触り、古い松葉を振るい落とすお手入れです。枝の数を増やし、亀甲模様のように枝を最長させていきます。

-手で触れて、振るい落としていくのは時間がかかりそうなお手入れだと思います。

(竹内)そうですね。今回は時間の関係上、もみ上げはせず、剪定のみ行いました。ミドリ摘み】で幼芽を上手に残しつつ、統一感のある【もみ上げ】を丁寧に行うことで、年月をかけて美しい枝ぶりに成長していきます。

-松のお手入れは特に美観を維持するために技術が必要だと感じます。

(竹内)松を管理するには、最低でも5年~8年以上の経験と知識が職人には求められると思います。

-最低でも8年。熟練の技ですね。ですが、熟練の技こそが、美しさを実現しているのが分かりました。松の木は、日本の庭ならではの庭木だと思います。日本風の庭園には必ず植わっているような印象です。

(竹内)松の木は、依代(よりしろ)の代表格です。昔から日本人は、松や杉、楠といった常緑樹を「神さまが舞い降りる依代」として大切にしてきました。神社ではご神木として大切にされています。そういったこともあり、日本庭園には欠かせない存在ですね。

―たしかに、神社の参道脇や境内には松が植わっていることが多いですね。

(竹内)お正月飾りや門松に用いられますし、長寿や夫婦和合の象徴としても植えられています。松は縁起の良い木です。手入れには長年の経験と知識が必要です、われわれも日々精進です。

-いかがでしたでしょうか。日本ならではの庭木「松」は、わたし達日本人の日常に幸や福を運んでくれるものなのかもしれません。
竹内庭苑では経験と知識を備えた職人がお手入れを担当させていただいてます。松の木の植栽を検討される方や、お手入れに分からないことがある方など、お気軽にお問合せください。