夏の終わり。
ん? ビールに蚊が侵入?
いえいえ、琥珀(こはく)です。
それも、虫が入った琥珀。
琥珀は宝石で、アンバ―といわれている。
どこか懐かしい暖かみを感じさせる宝石。
それは生物起源だからだろうか・・・
琥珀とは、樹脂(じゅし)の化石。
数千万年~数億年前、地上に生えていた樹木の樹脂が、土砂などに埋もれて化石になったもの。
埋もれてから数百~数千万年たつと琥珀になるといわれる。
ここに蚊などの小さい虫がすっぽり混入してしまうと「虫入り琥珀」となる。
カ(蚊)の最も古い化石は、ジュラ紀(約1億5千万年前)の地層から発見されている。
1)
カ(蚊)。
ハエ目、カ科に属する昆虫。メスが産卵前に吸血する。
それなら、ジュラ紀の蚊は恐竜の血を吸っていたのだろうか?
2)
映画『ジュラシック・パーク』では、琥珀に閉じ込められた蚊の腹部の血液から恐竜のDNAを採取し、恐竜を再生させている。
現代に両生類や鳥類の血を吸う蚊がいることもあって、ジュラ紀に恐竜の血を吸っていた蚊がいたと考えられている。
3)
ところで、蚊はふだんは何を吸って生きているのだろうか?
4)
オスもメスもふだんは花の蜜や樹液を吸って生きています。
蝶やカブトムシなどの昆虫と同じなのです。
* * *
2)㊨
さて、蚊や恐竜が住んでいたジュラ紀(約1億5千万年前)には、どんな風景が広がっていたんだろう。
どんな樹木が生え、どんな樹木が樹脂をだしていたのでしょうか?
5)
ジュラ紀(1億5千年前)は、大気中の二酸化炭素が濃く、現在よりも暖かく、雨も多く、湿度も高かった。
そのため植物も動物も種類が増え、大型化していった。植物では、裸子植物・針葉樹の森が広がっていた・・・
6)
球果が入った琥珀。右はそのアップ。
マツ目の1種が、自分の出した樹脂の中に、自分の球果(松ぼっくり)が入って琥珀になった?ナイス・キャッチ?
では、この樹木名は何なのか調べてみましょう。
チリマツ(ヨロイスギ)。
マツ目、ナンヨウスギ科、ナンヨウスギ属の常緑高木。南アメリカ、オーストラリア、ポリネシアなど南半球に分布。樹高40m。
これに似たものをジュラ紀の草食恐竜は首を伸ばして食べていたのだろうか・・・
7)
ウォレマイ・パイン。
マツ目、ナンヨウスギ科、ウォレミア属の常緑高木。樹高40m。オーストラリア原産。ジュラシック・ツリーとも呼ばれる。
ジュラ紀(約2億年前)から生存してきた「生きている化石」。草食恐竜のエサとなった樹木、琥珀の原料である樹脂を出す樹木、と考えられている。
8)
本来、樹脂のはたらきは、傷口からにじみ出てきて、その傷口を包み込んで傷口を保護するもの。恐竜にかじられれば、樹脂は出てくる。
では、そろそろエンディングといきましょう。
9)
ジュラ紀の地球㊧、現在の地球㊨。
大陸(プレート)は分裂を続け、北へ移動していく。
気候は、温暖であったジュラ紀以後、徐々に低温化していく。
そして、被子植物・広葉樹の出現によって針葉樹・ナンヨウスギは赤道付近から北へ追いやられていく。エサと一緒に恐竜も北へ追いやられていく。
10)
そして、北半球ではナンヨウスギも恐竜も、ともに絶滅した。
かろうじて、南半球にわずかにナンヨウスギが生き残った・・・
琥珀はナンヨウスギの涙。
いや、琥珀は恐竜の涙なのかもしれない。
(おしまい)
【出典】
5)日常風景のなかで
6)利中天然石
10)Wikipedia Araucaria araucana