アキニレの木です。
アキニレ(秋楡)はニレ科の落葉広葉樹で、同じ仲間は他に、ハルニレ(春楡)やケヤキ(欅)があります。
それぞれの葉をくらべてみると・・・
ざっくりいうと、葉先がヒョロっと細くなっていないのがアキニレ、先が細い2つのうち、葉縁がギザギザなのがハルニレ、ギザッとスルドイのがケヤキです。
ニレの木陰で…といえばハルニレ(英語名エルム)を指しますし、ケヤキは欅坂46で有名? アキニレはニレ科で唯一秋に花が咲くことが希少でしょうか・・・。
どの木も街路樹として植えられています。
さきほどのアキニレのアップです。
真ん中にある「赤いもの」が気になります。
これは、いったい何でしょう?
㋐ アキニレの花
㋑ アキニレの実
㋒ その他( )
⇩
⇩
⇩
答えは「その他」です。
㊧アキニレの花、 ㊨アキニレの実。
赤いのは、花でも、実でもなかったのです。
では、いったい、この「赤いもの」は何なんでしょうか?
よく見ると、「赤いもの」は葉っぱの真ん中から生えています。これは尋常ではありません。
桃太郎よろしく、2つに割ってみましょう!
せ
|
の
す
る
と
なにやら虫がお住まいだったようです。
これは、「アキニレ・ヨスジ・ワタムシ」アブラムシ科、タマワタムシ亜科の昆虫です。
それで、この虫のすみかのことを「虫瘤」(むしこぶ)とか「虫癭(ちゅうえい)とか言っています。
瘤、癭は「こぶ」「かたまり」「はれもの」の意味。
「虫こぶ」といっても、色々種類があるので、個別名をこうやってつけることにします。
植物の名前
+つくられる場所
+虫こぶの形状を表す言葉
+「フシ」(=附子…「こぶ」の意)
ですから、
「アキニレの葉にできた袋状のこぶ」は、
「アキニレ・ハ・フクロ・フシ 」と呼ばれます。
ハルニレやケヤキにも「虫こぶ」はできます。
㊧ハルニレ・ハ・フクロ・フシ、 ㊨ケヤキ・ハ・フクロ・フシ
では、いったい、この「虫こぶ」はどのようにしてつくられたのでしょうか?
⇩
⇩
⇩
ここはとある大学の実験室、ニンジンの組織培養をしています。
四角く切ったニンジンに何やら生えています。
黄緑の塊がカルス(分化していない細胞)、白く伸びたのが根です。
この時使っている薬品は2つ、成長ホルモンの「オーキシン」と「サイトカイニン」です。これらの分量を変えてうまく処理していくと、茎や葉も人為的に作ることができます。
もともと植物は、この2つの成長ホルモンバランスで自らの成長をコントロールしています。
が、なんと!
虫こぶの仕掛け人「アキニレ・ヨスジ・ワタムシ」などの成虫が葉に産卵するとき、葉の10万倍もの濃いサイトカイニンを注入します!
こんなことしたらどうなりますか?
その場所は、急激に細胞分裂を起こしプクッと膨らみます。
さらに!
卵からかえった幼虫は、100倍のオーキシン、1000倍のサイトカイニンを放出しながら中の空間で食べまわります。
結果、虫こぶはどんどん膨らんで大きくなっていくのです。
人為的なバイオテクノロジー等の先端技術も、たった一匹の昆虫の精緻な営みには及ばない・・・、ふとそんな考えが浮かんできます。
(おしまい)