01)

青木ヶ原樹海です。

富士山の西側、とある山頂からの遠望。

まさに樹木の海です。奥に見えるのは西湖。

「風の谷のナウシカ」の腐海ではありません。

 

01)

樹海の中に入ります。

うっそうと茂った樹木のせいで、昼間でも薄暗い。

 

02)

おやっ?

木漏れ日の当たったところに何やら落ちています。

1つはサッカーボールに、もう1つはラグビーボールに似ています。

 

これらは木の実です。

では、いったい何の木の実なのか? 親の樹木を見てみましょう。

 

03)

サッカーボール状の実の正体は、ヒノキです。

漢字は「檜 or 桧」。ヒノキ科ヒノキ属の常緑針葉樹。

「木曽ヒノキ」の森林は、「青森ヒバ」「秋田スギ」とあわせて日本三大美林の一つ。

葉は鱗片状、枝全体としては扁平。

サッカーボール状の実の中に種子が入っています。

 

では、ラグビーボールのほうは何でしょう?

03)

ツガです。漢字で「栂」と書きます。

マツ科ツガ属の常緑針葉樹。

葉はモミに似ているが、先がとがっていない。

ラグビーボール状の実で、この中に種子が入っています。

 

さて、ここで問題です。

この「ヒノキ」と「ツガ」の種子は、光の少ないこんな薄暗い場所でも、ちゃんと樹木になるまで育っていけるのでしょうか?

㋐どちらも育っていける

㋑どちらも育っていけない

㋒その他

答えは㋐どちらも育っていける、です。

「ツガ」「ヒノキ」はどちらも日陰を好む、日陰に強い樹木なのです。

これを「陰樹(いんじゅ)」といいます。

薄暗い陰樹林の中で、陰樹は育つことができるのです。

「親と同じ場所で子が育つ」

ここで疑問がわいてきます。

だったら、一番最初の「ツガ」「ヒノキ」が育つ時、日陰を作ってくれたのはいったい誰なの?

これから、ぼちぼち説明していきましょう。

 

 

04)  05)

火山の噴火です。

樹海ができたところの富士山の噴火もこんな感じだったんだろうか・・・。

06)

こんな溶岩が時間がたって固まると・・・。

月世界に似ていて、とても植物が育ちそうもない。

しかし、さらに時がたつと・・・。

表面に「苔(こけ)」が生えてきて・・・。

草が生えてきて・・・。

低木が生え、岩が風化して土壌ができてきます。

そうして、初めて高い樹木が生えることができるのです。

次の高い樹木が、陰樹に日陰を作ってくれた方です。

アカマツです。

赤松。マツ科マツ属の常緑針葉樹。

この樹木は日なたを好み、乾燥に強く、速いスピードで成長します。

これを「陽樹(ようじゅ)」といいます。

このようなキビシイ環境で、パイオニア的に育つのが陽樹なのです。マツ科マツ属には陽樹が多く、クロマツも陽樹です。山や海の岩場にマツが多いのはそのためです。

それはマツの根に、外生菌根菌が働いていて、痩せた土壌でも水や栄養分を強力に取り入れられるからだ、ともいわれています。

日当たりがよく、土壌が痩せている環境では、陽樹しか育つことができないのです。

アカマツの陽樹林ができます。

では、またまた問題です。

この「アカマツの陽樹林」内で、アカマツの種子は、ちゃんと樹木になるまで育っていけるのでしょうか?

㋐育っていける

㋑育っていけない

ヒント、アカマツの実(種子は中に)。

03)

答えは㋑育っていけない、です。

「アカマツ」は日なたを好む、日なたに強い「陽樹」です。

木陰ができて光が弱くなった陽樹林の中では、若い陽樹は育つことができません。アカマツ林の中で若いアカマツは育つことができないのです。

「親と同じ場所では子が育たない」

だったら、たくさんできた種子はぜーんぶ、ダメになってしまうのでしょうか?

07)

アカマツの種子は風に乗ってアカマツ林の外へ飛んでいきます。着地したそこが「日なた」なら、陽樹として育つことができるのです。

「かわいい子には旅をさせよ」

パイオニアの子は、やはりパイオニアとして生きるのです。

*      *      *

ここでいちど話を整理します。

森林は、かんたんに言えば、

陽樹林 → 陰樹林

と変わっていきます。この逆はありません。

ただし、すぐパッとチェンジするわけではなく、切り替えに数百年かかるので、途中でこんな状態もあるわけです。

陽樹林 → 陽樹半分 / 陰樹半分 → 陰樹林

この陽樹、陰樹が混ざった林を、「混交林」といいます。

*      *      *

青木ヶ原樹海のポイントにもどると、そこは

アカマツ林 → ツガ・ヒノキ林

と、陽樹林 → 陰樹林 で変化してきたわけです。

ここでまたまた疑問がでてきます。

今後もずっと青木ヶ原樹海では、「ツガ・ヒノキ林」が続いていくのかなぁ?

これらはどちらも「針葉樹」ですよね。「広葉樹」はどこへ行っちゃったんでしょう? 入ってきてもよさそうなのに・・・。

結論、広葉樹の種子も、荒れ地に来ているけど育たないわけ。土壌が湿ってフワッとしてくれば、あと数千年かかるけど、「広葉樹の陰樹林」になることでしょう。

「広葉樹」の「陰樹」で大木になるのは、

「ブナ」(ブナ科・落葉樹)30m、「クスノキ」「タブノキ」(クスノキ科・常緑樹)30m、「スダジイ」(ブナ科・常緑樹)25m、などなので、青木ヶ原樹海は将来、これらの陰樹林になる可能性があります。

しかし、青木ヶ原樹海の標高1000m、降水量、気温を考えると、最終的には上のような「ブナ林」になるのではないだろうか。

富士山が噴火しないならば、の話ではあるが・・・。

(おしまい)

【出典】

01) Wikipedia青木ヶ原

02) おばさんの、ひとりごと

03) 庭木図鑑 植木ペディア

04) Wikipediaハワイ式噴火

05) Wikipedia噴火

06) Wikipedia溶岩

07) マツの種FS700ハイスピード