「シマトネリコ」(島十練子)、別名タイワンシオジ。
モクセイ科の常緑広葉樹。高木。もとは熱帯や亜熱帯の山間に自生していた。
風にそよぐライトグリーンの葉が爽やか。シンボルツリーとして人気がある。
1)
シマトネリコの花と実。
花はなんとも可憐で美しい。
おや?
シマトネリコの根元にこんな穴が。
これをずっとたどっていくと・・・。
さらに・・・。
わっ、こんなにたーくさん、穴があいています!
これらはいったい何???
㋐子供がカサでつっついた跡
㋑アリの巣穴
㋒その他( )
2)
2)
3)
これらの穴は、セミの幼虫が地中から抜け出てきたときにできた穴だったのです。
「アブラゼミ」(油蟬)、カメムシ目・ヨコバイ亜目・セミ科に属する。
日本、朝鮮半島、中国北部に分布。成虫はサクラ、ナシ、リンゴなどバラ科樹木に多い。
2)
アブラゼミはシマトネリコにも好んでやってきます。
しかし、すぐとなりの「ユズ」にはまったく見向きもしません。根元に穴がないのです。
「ユズ」(柚子)、ミカン科の常緑広葉樹。
小高木。柑橘類の1つ。消費量・生産量ともに日本が世界最大。
1)
ユズの花と果実。
初夏に咲く花は香りが強い。
セミは酸っぱいのが苦手なのだろうか。ほかにクスノキ、イチョウなども苦手らしい。
また、細い木にはつかないともいわれている。根が発達していないと幼虫が困るからなのか、セミ穴がみつからない。
ちなみに、日本最小のセミは「イワサキクサゼミ」で体長2cm。
分布は、沖縄本島・宮古島・石垣島・西表島・台湾。サトウキビ、ススキ、チガヤといったイネ科植物に住みます。
4)
ここで、問題を1つ。
アブラゼミの幼虫は5年間地下で過ごし成長します。
この時エサは何を食べているのでしょう?
㋐小さい虫
㋑木の根
㋒その他( )
2)
セミの幼虫は木の根を食べています。
ただし、根をかじりとるのではなく、ストローのような口で根の中の樹液を吸っているのです。
ですから、セミ穴は根の真上にあいていることになり、地上の穴をみて地下の根の張り具合を想像することができます。
いわば根のレントゲン写真。
* * *
おや? これは何でしょう?
5)
太めのマッチ棒ではありません。
セミの穴が見つかった近くで生えている「キノコ」です。
6)
ダブルで生えていることもあります。
少し掘ってみましょう。
7)
おっと、何やらオマケがついてきました。
これは、セミの幼虫です。
6)
キノコの名前は「オオセミタケ」。
アブラゼミやエゾゼミなどの幼虫を宿主とする、冬虫夏草の一種。
セミの幼虫は栄養を吸われて、お亡くなりになっております。
アブラゼミは樹木の吸汁害虫。
オオセミタケはアブラゼミの天敵。
樹木の根→アブラゼミ→オオセミタケ
これで自然界のバランスが保たれる。
7)
オオセミタケはまるでアブラゼミの墓標。
この小さな墓標は、われわれに「いのちは複雑につながっている」ことをそっと教えてくれているのです。
(おしまい)
【出典】