みなさまこんにちは。師走ですね。
茅ヶ崎は暖かい冬かと思いきや、寒さが身に染みる日も増えてきました。
いよいよ年末を迎える心持ちです。折しも本日は冬至です。

年末になると、
お庭をお持ちで植木屋さんに「年末のお手入れ」を頼まれる方も多いのではないでしょうか。
お庭もスッキリして新しい年を迎えたいですね。

竹内庭苑でも施主様のお宅に御訪問し、
年末のお手入れをさせていただいております

今回は、お正月を迎えるに相応しいテーマ
「日本庭園の美しさ」について、竹内社長にインタビューしています

-先日、年末のお手入れさせていただいた施主様ですが、ザ「日本庭園」という様子ですね


(竹内)そうですね。
日本庭園は、庭の中に「自然が織りなす景観」を創り出すものです。
庭そのものは、人が手を加えて、人の力で人工的に造られるものですが、
庭という空間全てを使って、
里山の風情など手つかずにそこにある日本の美しさや趣きを再現します

-自然の景観を人(庭師)の力で人工的に表現する、それも、「庭」という限られた空間の中で。美しさは、どのように再現するのでしょうか。

(竹内)自然の美しさを、庭という限られたスペースに創り出し表現するには、植える樹木の存在が不可欠です。庭木には植える場所や樹種に、それぞれ役割があります。役割を持った木=役木、とわたし達は呼んでいます。

-役木ですか。ガーデンのシンボルツリーのようなものはイメージできますが、日本庭園に植えられた木にも役割があるのですね。

(竹内)ガーデンのシンボルツリーのように、その庭の中の主木を【正真木(しょうしんぼく)】と言います。その庭の景観の中心となる樹木です。選ばれる樹種としては、松や槙の木が多いですね。

-確かに。日本庭園というと立派な松が印象的です。「なんとなく」ではなく、景観の中心となる、という役割をもって植えられているのですね。

(竹内)正真木の対照的な存在として、正真木を引き立たせる役割をもつのが【景養木(けいようぼく)】です。正真木とは対比されるような樹種が選ばれます。正真木が松のような針葉樹の場合、景養木は楓のような広葉樹を選びます。対照的な樹種を選ぶことで、より、正真木の美しさを引き立たせるのです。

-一つひとつの樹木ではなく、庭全体としてのバランスから景観美を創り出すのですね。敢えて対照的な樹種を選ぶ選択は興味深いです。

(竹内)樹木同士の全体のバランスだけではありません。陽の差し込む方角を考慮するなど、日本庭園の美しさは、太陽光や風向きも踏まえて創り出されています。【夕陽木(せきようぼく)】は、名前の通り、差し込む夕陽を活用し、葉が美しく透かされるようにと庭の南西に植えられます。西日が美しく差し込むと、樹木の葉は美しい影を夕方の庭に創り出します。選ばれる樹種は楓が多いです。

-影の美しさも味わえるようにと設計されるとは。日本庭園は緻密に考えて造られていることが分かります。日本庭園の美しさを引き出す庭師の技術を深堀りしていきます。
-樹木だけではなく、こういった岩があるのも日本庭園ならではだと思います

(竹内)日本庭園には【景石(けいせき)】という、加工をしない天然の岩や石が据えられることがあります。

-加工していない、人の手を加えていないとなると、庭のどこに、どのような向きで据えるのかが、全体の景観美から考えると重要になってきますね。

(竹内)庭全体で美しい山や滝を表現するために、という視点や、樹木の根元を安定させる目的で景石を配置していきます。樹木の安定という目的ですと、岩の景石ではなく、低木を植えることもあります。

-庭全体の景観のバランスという視点で考えたとき、他にも樹木や岩に役割を持たせることはありますか?

(竹内)【飛泉障りの木(ひせんざわりのき)】は、滝が落ち始める所を隠す場所に植えられます。これにより、より風情が生まれます。

-様々な役割を果たす樹木や岩などにより、全体としての景観美が生まれるのですね。植えられた後のお手入れ=剪定には、どのようなポイントがありますか?

(竹内)剪定には、切り透かした剪定と、刈り込んだ剪定があります。それぞれ樹種によってどちらを選ぶか、仕立て方が違います。また、人が仕立てた美しさと、自然に見える美しさを区別して手入れすることも重要です。

-確かに、すべてが作り込まれている状態はむしろ不自然で、生き物である樹木だからこそ、そのままの自然の姿が美しいということもあると思います。

(竹内)樹木の美しさも、陽の光や風といった、自然の条件で変わります。眺める位置、日の差し込み方、季節、時間帯など、さまざまな条件が重なることで、美しい景観に出逢うことができます

-誰もが得られるものではなく、その美しさとの出逢いは偶然のものであったり、二度とない美しさであるかもしれませんね。樹木の大きさや岩など、ダイナミックに見えますが、その実は、とても繊細で奥深いものなのかもしれませんね。

(竹内)そうなんです。庭師は、細かな所にこそ気を配り、年末は「気持ちよく新しい年を迎えることができるように」という想いも込めて、庭をお手入れさせていただきます。ご不明な点や気になることなど、ご遠慮なくお気軽にご相談ください。

-いかがでしたか。造園職人である庭師の仕事は、11月にご紹介した伐採のように一見ダイナミックに見えるものもありますし、「夕方の西日が差し込む一時の美しさ」を最大限に生み出すためにと繊細なものもあります。

2021年も大変お世話になりました。
2022年も、日本庭園を創り出す庭師だからこそ有している技や技術、知識と感性で、美しい景観を造り出していきます。
そして、美しい景観を造り出すことを通して、日本に暮らす多くの方々の心豊かな時間を創れるよう、日々精進していきます。