1)
森の中で聞きたい曲。
ジョージ・ウィンストンのLonging/Love(あこがれ/愛)。
聞きながら先にお進みください。
ここは林床。林冠に降り注いだ日光の数パーセントしか届かない薄暗い世界。
この薄暗い世界に、普段気づかないものがいた・・・。
2)
動物? 植物? それとも・・・。
2)
からだじゅう真っ白。じっとして、動かない・・・。
いったい、この白っぽい姿をしたものは何なのか?
㋐スイセンのなかま(植物)
㋑キノコのなかま(菌類)
㋒その他
動物とか・・・。
↓
↓
正解は㋐、植物です。
ギンリョウソウ(銀竜草)、ツツジ科ギンリョウソウ属の
多年草。別名ユウレイタケ。日本全土に分布し、針葉樹林
や広葉樹林の暗くしめった林床に生える。
でも、植物っていう証拠は?
3)
真ん中の、先が青いのが「めしべ」。
まわりの、先が黄色いのが「おしべ」。
2)
受粉してめしべがふくらむと、実になります。
そして、中に種子が入っています。つまり、種子植物。
ここで、問題。
種子植物は普通、緑色の葉で光合成をしています。
ところが、ギンリョウソウは全身真っ白です。
さて、ギンリョウソウは光合成しているのでしょうか?
㋐光合成している
㋑光合成していない
2)
↓
正解は㋑、光合成していない。
そもそも葉緑体がないので光合成できない。
えー? 植物が光合成しないで、どうやって生きていくのさ? エネルギー源の炭水化物をどこから手に入れているの?
㋐地中の腐った木片
㋑地中の生きている木の根
㋒その他
↓
正解は㋒です。
以前は「腐生植物」と呼んでいました。地中の腐ったものから炭水化物を取っていると考えられていたのです。しかし、いくら探しても腐ったものは見つかりませんでした。
ギンリョウソウの根は、地下で菌糸とつながっていたのです。キノコの菌糸から炭水化物をもらっていたのです。
4)
ギンリョウソウの根は短く、そこに菌根化したキノコの菌糸がからみついている。
5)
秋、ベニタケ属が多く出る林には、春先にはギンリョウソウが生えてきます。土の中でベニタケ類の菌糸とギンリョウソウの根はつながっていたわけです。
しかし、ベニタケは菌類なので光合成はせず、炭水化物はつくれません。ベニタケもだれかから炭水化物をもらわなくてはなりません。
そこで、ようやく樹木の登場となるのです。
以前紹介したように、ベニタケ属のキノコは菌根菌というグループなので、樹木と共生しているのです。マツ科やブナ科の木の根とつながっていて、樹木から炭水化物をもらい、樹木には土からの水や栄養分をあたえています。
㊧6) ㊨5)
ということは結局こうなります。
㊧6) ㊥㊨5)
結局、ギンリョウソウはコナラが作った炭水化物をベニタケを通してもらっているわけです。セコイ!
コナラとベニタケはお互いさま(共生)ですが、ギンリョウソウはもらいっぱなし(寄生)です。ズルイ!
それで、ギンリョウソウのような植物を「菌従属栄養植物」と呼んでいます。
地面の下の世界では、我々が見えないだけで、このようなことが1年中おこなわれているのです。
「本当に大切なものは目に見えない」
(サン・テグジュペリ、『星の王子さま』より)
ーおしまいー
【おまけ】
最近の研究によると、ある植物の仲間が光合成をやめてギンリョウソウになったのではないか、と言われています。その植物は何だと思いますか?
実は、ギンリョウソウに一番近い種属は同じツツジ科の「ドウダンツツジ」の仲間で、元々は光合成していたのです。
㊧7) ㊨2)
ドウダンツツジ(灯台躑躅、満天星)、ツツジ科ドウダンツツジ属の落葉広葉樹。低木で樹高3mほど。
㊧㊤7) ㊧㊦8) ㊨㊤2) ㊨㊦5)
ドウダンツツジの仲間は、進化の過程で光合成をしなくなる時に、利用できる菌類の種類を変えたのです。
というより、菌類が変わったからこそ、光合成をしなくても生きていけるように進化できたのでしょう。
【出典】
1)George Winston - Longing Love
5)ほっこり安曇野屋
7)植木ペディア