01)

ヒメリンゴ(姫林檎)の実です。

味は・・・ので、主に観賞用。でも、果実酒にするのはありです。

 

01)

ヒメリンゴの花と葉です。

バラ科、サクラ亜科、ナシ連、リンゴ属の落葉広葉樹。

 

おや? この葉、一部だけ紅葉(黄葉)している?

葉の裏側も見てみましょう。

えっ! これは何でしょう?

答えはのちほど・・・。とりあえず先へ進みましょう。

01)

ここはとあるお宅の生垣。

この樹木はカイヅカイブキ(貝塚伊吹)です。

 

01)

カイヅカイブキの葉です。

ヒノキ科、ビャクシン属の常緑針葉樹。

イブキ(ビャクシン)の園芸品種。大阪の「貝塚」で作られたためカイヅカイブキといわれています。

 

㊧01)  ㊨02)

カイズカイブキの花と実。

よく見ると、どちらもとても面白い形をしています。

 

しかし、さらに!

こんなものがカイズカイブキについています。

03)

なんじゃこりゃー! まるでオレンジゼリー。おいしそう!

では、ここで問題です。

さきほどと、今回、この2つはいったい何なのか・・・。みなさんはどう思いますか?

㊨03)

予想

㋐ 葉の一部が変形してできたもの

㋑ ある種の動物がとりついたもの

㋒ その他(         )

ヒント

これらは同じDNAを持った、同一の生物です。

正解は㋒です。これらは、どちらも赤星病という病気にかかっていて、その正体は赤星病菌Gymnosporangiumというカビ・キノコの仲間の真菌類です。

葉がこの菌にやられると赤い星のように変色するのでこの名がつきました。感染した葉はやがて腐って落葉してしまいます。

 

ここでさらに問題です。

この赤星病菌は1年中、これらにとりついているのでしょうか?たとえば、冬には寒さで死滅していなくならないのでしょうか?

予想

㋐ どちらの植物にも1年中とりついている

㋑ どちらの植物にも1年中はとりついていない

㋒ その他(            )

正解は㋑です。どちらの植物にも1年中はとりついていません。ヒメリンゴには、春から夏までとりついています。カイヅカイブキには、夏から翌春までとりついています。(翌翌春もあり、その場合は㋒)

つまり、アカボシビョウキンは2種類の植物の間を行ったり来たりして生活しているのです。ヒメリンゴからヒメリンゴへは2次感染しません。

*      *      *

このように、生活史の時期によって異なる宿主に寄生することを、「異種寄生」といっています。片方の宿主だけだと生きていけない。

この場合、寄生されて大被害にあう方がヒメリンゴなので「宿主」、そうでない方のカイヅカイブキを「中間宿主」と呼んだりします。

つまり、春から夏に、ヒメリンゴから栄養を取って成長し仲間を増やし、秋から冬に、落葉広葉樹のヒメリンゴが枯れたり、落葉したりして利用できなくなると、常緑針葉樹のカイヅカイブキに乗り換えて(逃げて?)生き続け、また春になると戻ってくる・・・、これはたくましいのか、哀れなのか?

ですから、ヒメリンゴをいくら消毒・殺菌しても、近くのカイヅカイブキをそのままにしていては意味ないわけです。カイヅカイブキも殺菌するか、いっそのこと近く(2km以内)に植えないようにしないといけません。これは、市によっては赤星病防止条例で決められています。(千葉県松戸市など)

ちなみに、赤星病での異種寄生の組み合わせは、

「バラ科、サクラ亜科、ナシ連」に属する宿主A、

「ヒノキ科、ビャクシン属」の中間宿主B、

で、色々な組み合わせが可能です。

例えば、以下のA-B間の樹木を行ったり来たりします。

Aには、

「ナシ属」ナシ、セイヨウナシ。

「リンゴ属」リンゴ、ハナカイドウ(下写真)。

01)

「ナナカマド属」ナナカマド。

「ビワ属」ビワ。

「ボケ属」ボケ(1つ下写真)、カリン(2つ下写真)。

01)

「ザイフリボク属」ジューンベリー。

01)

「シャリンバイ属」シャリンバイ。

「カナメモチ属」カナメモチ。など。

*      *      *

Bには、「ビャクシン属」

イブキ(ビャクシン)、

01)

ハイビャクシン(ソナレ)、

01)

セイヨウネズ、

ハイネズ(ブルーパシフィック)

01)

ネズ(ネズミサシ)、

01)

フィツェリアーナビャクシン(オールドゴールド)など。

*      *      *

さて、そろそろエンディングと行きましょう。

みなさんは、ほかにも「異種寄生」する真菌があると思いますか?

㊧04)  ㊨05)

㊧アカマツ(マツこぶ病)  ㊨ミズナラ(ナラさび病)

このマツこぶ病菌(=ナラさび病菌)は、マツ科マツ属(アカマツ、クロマツ)とブナ科コナラ属(コナラ、ミズナラ)の樹木を行ったり来たりします。

実は、赤星病菌も松こぶ病菌も真菌で、担子菌門・サビキン亜門・サビキン綱・サビキン目に属していて、7000種以上の仲間がいます。

植物に寄生し、赤・黒などに着色したサビのように見える無性胞子(サビ胞子)を作ります。その病害はサビ病と呼ばれ、農業・林業において多大な経済的損失を引き起こしています。

「異種寄生」という分類上まったく関係ない2つの植物種の間を行ったり来たりする、ようになったのはいったいなぜなのか?

ヒントは、常緑針葉樹と落葉広葉樹の組み合わせにありそうです。

では、この謎を解くため、想像の翼をはるか過去の森林へと広げていくことにしましょう。

(おしまい)

【出典リスト】

01)庭木図鑑 植木ペディア

02)Mamiiの雑記帳

03)でーれーええかげんじゃけー

04)県営烏川渓谷緑地

05)一般財団法人 日本緑化センター