01)
9月、残暑。
森に入れば、涼しい。
01)
ふと、立ち止まる。
倒木か…
上には折れた枝がのっている。
01)
ん? 枝から足のようなものが…
これは何だ?
02)
ツマキシャチホコ(褄黄鯱鉾)。
チョウ目シャチホコガ科に属する昆虫。
01)
この蛾(が)は羽を閉じると、折れた枝そっくりになる。
ちなみにツマキシャチホコの幼虫は、クヌギやコナラなどブナ科の葉を食べる。
01)
森に倒木があると、そこはギャップ(光が差し込む隙間)となる。
01)
ギャップでは光を受けて草や低木が、かたまってわさわさと生えている。
そこに何かがいた…
01)
カマキリ(鎌切)。カマキリ目に属する昆虫。肉食。
おなかが折れ曲がっているのは威嚇で、ハラビロカマキリの特徴だ。
羽がないのはまだ成虫前だからで、よけいに葉や茎と見分けにくい。
㊧01) ㊥03) ㊨04)
シャクトリムシ(尺取虫)3兄弟。
シャクトリムシはチョウ目シャクガ科の蛾の幼虫です。
みなさん、シャクトリムシはどこにいるかわかりますか?
㊧01) ㊥03) ㊨04)
ここです(赤丸)。
別名、土瓶(どびん)落とし。
昔、枝だと思って土瓶をかけたら落ちて割れたことから来ています。
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では、これは何がどこにいるでしょう?
01)
ナナフシ(七節)。ナナフシ目に属する昆虫。草食。
長いものでは50cmにもなる。
01)
秋のナナフシ。
どこにいるかわかりますか?
01)
長い枝にぶら下がっていました。
ほんと分かりにくい…
今まで見てきたように、生物が攻撃や自衛などのために、からだの色や形などを、周囲の物や植物・動物に似せることを「擬態(ぎたい)」といいます。
また、擬態で背景の色と同じになったからだの色のことを特に「保護色(ほごしょく)」といっています。
では、そろそろエンディングといきましょう。
05)
ラン(蘭)の花に擬態したハナカマキリ。
おなかの色合いが花びらの色合いによく似ています。
では、ここで問題です。
たとえば「蘭の花がカマキリに姿かたちを似せる」ような、つまり「植物が昆虫に擬態する」といった今までと逆のことがあるでしょうか?
㋐あると思う ㋑ないと思う
01)
これはハチ(蜂)?
それともガ(蛾)?
01)
いいえ、ラン科の植物です。
ハチラン(蜂蘭)といいます。
01)
では、もう1枚。
これはどうでしょう?
01)
はい、こちらも蜂蘭です。
蘭が、蜂に「擬態」しています。
でも、なんで植物が「擬態」なんかをするのでしょうか?
じつは先ほどの蜂蘭は、外見や体毛がメスの蜂にそっくりなのです。
そしてさらにメス蜂の性フェロモンに似た物質まで分泌するので、オスの蜂は完全にダマされて疑似「交尾」させられてしまいます。
その結果、蜂のからだには蘭の花粉がたっぷりつくというわけです。
蘭は身を隠したり、捕食したりするためでなく、「自分の子孫を残すため」に蜂に擬態していたことになります。
でも考えてみれば昆虫の「隠れる・捕食する」擬態にしても生き延びて子孫を残すためにしていると言えなくもありません。
地球上でもっとも繁栄している植物と昆虫、一方の進化がもう一方の進化を生じさせる「共進化(きょうしんか)」がこれからもきっと続いていくことでしょう。
06)
枯れ木に、1枚の枯れ葉。
06)
じつはコノハチョウ(木の葉蝶)の超精密な擬態。
ここまでくると、かのダーウィン先生もお手上げです。
生命のもつ深遠さに言葉を失ってしまいます。
ー おしまい ー
【出典リスト】
01)Pixabay
02)東京23区内の虫 2
05)Wikipedia Hymenopus coronatus
以上、使わせていただきありがとうございました。