白樺、青空、南風♪
北国の春です。
シラカバ(白樺、学名:Betula platyphylla)、
カバノキ科カバノキ属の落葉樹。正式名はシラカンバ。
樹皮が白いことからこの名がある。冷涼な高原に生える。
シラカバは、陽樹で日なたを好み、荒れた土地や攪乱地に真っ先に生える先駆樹種(パイオニアプラント)です。
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さて、ここは北海道の先にある千島列島。
これも幹が白いからシラカバでしょうか?
いいえ、シラカバではありません。
ダケカンバ(岳樺、学名:Betula ermanii)、
カバノキ科カバノキ属の落葉広葉樹。山岳地帯に生育する樺という意味で「岳樺」といわれる。やはり陽樹で先駆樹種です。
シラカバとダケカンバはどちらも白っぽい幹なので、遠目にはなかなか見分けがつきません。
では、どうやって見分ければよいのでしょうか?
㊨02)
まず幹です。
シラカバ㊧は白色ですが、ダケカンバ㊨はうすい赤茶色。
シラカバの白はペチュニンという抗菌物質で、白い粉が手につくことがあります。ダケカンバはうすくペラペラにはがれ、紙として使われたのでソウシカンバ(草紙樺)ともいわれる。
しかし、中間色もあるので間違いやすい。
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次に枝です。
シラカバの幼木は白くなく黒い。だから、枝も黒っぽい。
そのため、枝が落ちた幹のところが黒いへの字の形になります。ダケカンバの枝は幹と同じ色で黒くありません。
これはけっこう判別しやすいポイントです。
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さらに葉です。
シラカバの葉脈は7本前後、ダケカンバの葉脈は11本前後で、ダケカンバの方が葉脈の数が多い。これをセブンイレブンと覚えるとよいとか。
う~ん、慣れないと瞬間的に判別するのはきびしいかなぁ。
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垂直分布を調べると、
中部山岳では、シラカバは1000~1500m(落葉広葉樹林帯~亜高山帯)に生えています。
上は、北アルプス・上高地(1500m)。
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ダケカンバは、1500m~森林限界まで(亜高山帯~高山帯)となっています。
上は、奥秩父・金峰山(2599m)の黄葉したダケカンバ。
1500mが両者のすみわけラインです。いいかえると、両方あればそこはだいたい1500m地点だということです。
ちなみに、シラカバも秋には黄葉します。
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春の開葉は、シラカバの方が早く、5月になってシラカバが葉をつけ始めてもダケカンバはまだ葉をつけていません。枝が黒いのがシラカバ、白いのがダケカンバです。
寒冷地に生えるダケカンバは、晩霜の害を避け開葉を遅らせて、短い夏に一気に光合成をして生長するのです。
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種子の数は、シラカバ㊧の方が多く、100gあたり34万個で小さく軽い。ダケカンバ㊨はその半分の数で、種子はやや大きく重い。
どちらも翼を持った風散布です。しかし、シラカバは散布距離を、ダケカンバは栄養含有量を重視しているのです。
シラカバの方が生長は速いが、寿命は短く70年(種子を着けるまで10年)ほどしかありません。
シラカバは短いサイクルで世代交代を行い、自家不和合性(自家受粉しない)が強く、別の個体と花粉のやり取りをして、色んなところにどんどん個性豊かな仲間を増やす戦略です。
シラカバは根が浅く、倒れやすいといわれます。それは、幹をまっすぐに速く生長させるのに、多くのエネルギーをつぎ込むからです。
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一方、ダケカンバは萌芽更新をして寿命は300年あります。
株立ち樹形で複数の幹をつくり樹冠を横に広げ延命し、同じ場所で長期間種子をばらまく戦略です。
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ダケカンバが雪に強く、樹形を自在に変えることができるのは、幹の生長だけでなく、支えとなる根の生長にもそこそこエネルギーをかけるからです。
白樺と岳樺。
遠目に見るとよく似ている、同じカバノキ科カバノキ属の2つの樹木。
しかし、これらは限られたエネルギーを使い、まったく異なった「生き残り戦略」を行って、自分たちの子孫を繁栄させているのです。
(おしまい)
【おまけ】
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シラカバの園芸種、ジャクモンティ。
本来シラカバは高原などの冷涼な気候を好みますが、これは暖かいところでも育ってくれます。この品種はなんと幼木から幹が白い。庭に植えたい方はどうぞ。
【出典】
02)八ヶ岳の東から
03)北東北の樹木図鑑
05)あかね雲のホームページ
06)川崎みどり研究所