謹賀新年
この樹木話も12話目、おかげさまで1年間続けることができました。読者の皆様に感謝申し上げます。
さて、お正月になると思い出されるのが幼少の頃、家族で遊んだ「花札」です。花札は1年12か月にそれぞれ植物を配した日本の伝統美の1つです。
この中に樹木が8種類、草本が4種類出てきます。各月4枚あるので12か月で計48枚の札があります。その中で特に有名な札が20点札(光札)のこの5つ。
左から、1月マツ、3月サクラ、?月???、11月ヤナギ、12月キリとなっています。
年末年始にしぼると、
1月は「松に鶴」で、年の初めに縁起が良いもの。そして初日の出。
松をバックに鶴が飛翔。それならバッチリだったのですが、鶴(タンチョウ)は湿原や平地にいますので、松にとまったりはしません。これは、コウノトリでバックはマツ科の針葉樹です。コウノトリも縁起がいい鳥なのでオーライ。
12月は「桐に鳳凰(ほうおう)」で、これも縁起物。鳳凰は中国神話の伝説の鳥、霊鳥。
ちなみに、キリは花期が5~6月なのになぜ12月の札なのかについて、1年の終わりで「キリが良い」という説がありますが、定かではありません。
1)
キリ(桐)。シソ目、キリ科、キリ属の落葉広葉樹。高木で高さ10m。国内でとれる木材としては最も軽い。また、湿気を通さず、割れや狂いが少ないという特徴があり、高級木材として重宝されてきた。桐の箪笥(たんす)が有名。
2)
キリの花と実。
春の花木が一段落した頃に紫の花を咲かせるが、高いところに咲くのと、花弁が落ちやすいのであまりお目にかかれない。
では、真ん中の札は8月「坊主(ぼうず)」とも呼ばれているものですが、いったいなんでしょう?
私は長い間、「海に上るお月様」だと思っていました。でも、海は植物ではない・・・。
ヒント:草本です。樹木ではありません。
3)
ススキ(芒)です。
8月は旧暦、「ススキに月」は中秋の名月です。まあ、風に花穂がキラキラなびく姿は、大海原に波が押し寄せる感があります。まさしく、ススキの海原。
ちなみに、これは私の好きなムーンリバー。ススキに見えなくもない。
さて、幼少の頃、気づかなかったことがもう1つあります。
それがこれです。
当時、左2つを「あかまんま」、右2つを「くろまんま」と呼んでいました。これらはすべて1点札(素札)です。この2種類の札は、似ているので間違いやすいのです。
では、これらの植物はいったい何でしょう?
ヒント:「あかまんま」は7月、「くろまんま」は4月の札。
ヒント2:どちらもマメ科の樹木(木本)。
まず、「あかまんま」の正体はこれです。
2)
ハギ(萩)、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7~10月。
4)
ハギの花と実。
マメ科の花の多くは、花びらは5枚で、上に大きくよく目立つ1枚(旗弁)があり、下に残りの4枚がある。この形が蝶が羽を開いた姿に似ているので「蝶形花(ちょうけいか)」と呼ばれています。
次に,「くろまんま」です。
2)
フジ(藤)、マメ科フジ属のつる性落葉木本。
花期は4~6月。寒さにやや強く、北海道まで植栽できる。
㊧5) ㊨4)
フジの花と実。
典型的なマメ科の特徴を持つ。花は「蝶形花」。
実は巨大な鞘(さや)状で、種は1列に入っている。これを「豆果(とうか)」といいます。サヤエンドウやエダマメと同じです。
ところで、フジの花札4枚組はこうです。
6)
あれっ? さっきと逆で、上から下へ生えています。いえいえ、藤棚から下がるから、これでいいんです。
小学生の私は、右の3つの上下を間違えて花札をしていたのです。というより、この高級な花札には、花の藤色がちゃんと出ています。まあ、これでも間違えたかもしれませんが・・・。
ちなみに、鳥はホトトギス。「藤にホトトギス」で初夏のイメージです。
それでは、お正月なので早めにオチと行きましょう。
一方の、ハギの花札4枚組はこうです。
「萩にイノシシ」です。
理由はさておき、優雅な萩と荒々しい猪の組み合わせが、なんとも「美女と野獣」のようで、その対比が面白い。萩を寝床にして穏やかに寝ている猪の姿ということなんでしょう。
今年の干支は亥。猪年です。猪突猛進よりも、熟慮断行といきたいものです。
(おしまい)
* * *
(おまけ)
花札に出てくる樹木8種のうち、マツ(1月)、サクラ(3月)、フジ(4月)、ハギ(7月)、ヤナギ(11月)、キリ(12月)を紹介してきましたが、あと2つ残っていますのでここで補足します。
㊧ウメ(2月)、㊨モミジ(10月)です。
ちなみに、モミジにでてくる「シカ」はそっぽを向いています。これは「シカ」+「10月(トオ)」=シカトオ(無視)だとか・・・。
【出典リスト】
1) wikipediaキリ
2) 庭木図鑑 植木ペディア
3) NAVERまとめ
4) 季節の花300
6) 京都大石天狗堂