01)

海岸の岩場に生えるマツ。

美しい日本の風景。

 

 

02)

それが今、失われつつある。

「マツ枯れ」だ。

 

 

03)

夏から秋にかけて、

それまで正常だったマツの針葉が急速に色あせ、

赤褐色になって枯れてしまう。

 

 

 

04)

まわりのマツに感染して広がっていくから、

どうにも始末に負えない。世界的な問題になっている。

いったい原因は何なんだろう・・・

 

 

02)

おや? 怪しいものがいます。

何者でしょうか?

 

 

02)

マツノマダラカミキリ。

(コウチュウ目・カミキリムシ科の甲虫。日本在来。全長約3cm。)

幼虫は傷んだマツの内部を、成虫はマツの若い枝を食べる。

 

それなら、このマツノマダラカミキリが「マツ枯れ」の犯人なのでしょうか?

 

 

*      *      *

 

 

05)

いいえ、ちがったのです。

真犯人が別にいたのです。

それは、わずか1mmの透明な生物。

 

 

02)

マツノザイセンチュウ。

(線形動物門、双腺綱、 葉線虫目、アフェレンクス科)

マツの細胞と菌類を食べて増殖します。北アメリカ原産。

 

 

04)

産卵から成虫まで3~5日、産卵数約100個と猛烈に増殖します。

この増殖したセンチュウが、体内の水の流れを止めてマツを枯らしていました。つまり、脱水症状でマツは枯れていたのです。

ですから、マツ枯れを正式には「マツ材線虫病」と呼びます。

 

 

*      *      *

 

では、このへんでオチといきましょう。

センチュウは木の中にいるので、マツからマツへと移動できません。

では、センチュウはどうやって木から木へと移動して、次々とマツを枯らすことができたのでしょうか?

 

 

01)

実は、手助けをしたものがいたのです。

マツノマダラカミキリ、

彼は無実ではなく、共犯者だったのです。

 

 

01)

カミキリがさなぎの時に、

センチュウはカミキリの気門(お腹にある呼吸する穴)にもぐりこみます。

 

01)

そして、カミキリが成虫になる初夏、センチュウはカミキリに乗せてもらって、次のマツまでフライトしていたのです。

このときのカミキリを「媒介者(ばいかいしゃ)」といいます。英語で「ベクター」。

 

もともと、マツノマダラカミキリは日本産で、弱ったり枯れたりしたマツにしか産卵せず、成虫は健全なマツをかじり、すこしづつ食べていた。

これだけだったら、どうってことなかった。

 

06)

しかし、数十年前にマツノザイセンチュウが北米から入ってきて事態が一変した。

カミキリとセンチュウのコンビネーションで、健全なマツまで枯らすようになってしまった・・・。

では、どうやって被害をくい止めるか?

 

 

07)

ボーべリア・バシアーナ。日本名は「白きょう病菌」。

「昆虫捕食菌」で、カビの一種。昆虫しか食べない。

現在、マツノマダラカミキリにも使われている。

 

08)

センチュウをつかまえた菌類(カビ)の菌糸。

菌糸の輪に入るとしめつけ、とかして食べる。「線虫捕食菌」の一種。

マツノザイセンチュウ対策として研究が進められている。

 

自然界はうまくできている。

「昆虫を食べる菌類」もいれば、「線虫を食べる菌類」もいる。

そして、これらの逆もある。

 

自然界のバランスを人間が壊した。

ならば、人間が自然界にあるものを使い、

元に戻してやればよいのではないだろうか。

 

ーおしまいー

 

【出典】

01)pixabay

02)Wikipediaマツ材線虫病

03)Wikipedia Bursaphelenchus xylophilus

04)M&Kぶろぐ

05)Wikipedia Dennenhoutnematode

06)国立研究開発法人 森林研究・整備機構

07)ふしあな日記

08)JapaneseClass.jp