01)
夏、樹木が生き生きと輝く季節。
01)
生きている=息をしている・・・
みなさんは樹木の「息づかい」を感じたことがありますか?
01)
人間と同じく、樹木もたくさんの生きている細胞でできていて、その1個1個は酸素を吸っています。
02)
気孔(きこう)の電子顕微鏡写真。
気孔は樹木が「息をする」小さい穴で、葉の裏にたくさんあいています。
人間の目には見えませんが、いわば人間の鼻や口にあたるところです。葉の細胞はここから入った酸素を吸って生きています。
01)
それなら、木の幹にも気孔があるのでしょうか?
㋐あると思う。 ㋑ないと思う。
木の幹には気孔はありません。
01)
それなら、木の根にも気孔があるのでしょうか?
㋐あると思う。 ㋑ないと思う。
木の根にも気孔はありません。
気孔があるのは葉だけです。
01)
さて、秋になると落葉広葉樹は紅葉します。
01)
葉の細胞は水分や栄養分を止められて死んでしまいます。
01)
気孔を持った葉がなくなるわけですから、葉での呼吸活動は停止します。
では秋から冬の間、葉以外の枝や幹、根の細胞はどうやって酸素をもらっているのでしょうか?
それとも春になって若葉ができるまで、落葉広葉樹は呼吸していないのでしょうか?
㋐枝や幹、根の細胞は何らかの方法で呼吸している。
㋑枝や幹、根の細胞は呼吸していない。
㋒そのほかの考え。
01)
正解は㋐です。
ぽちっぽちっと茶色いのが見えます。幹の細胞はここから酸素をとり入れているのです。これを「皮目(ひもく)」といいます。
桜の樺細工(かばざいく)の茶筒。
秋田・角館の伝統工芸品で、40年前のいただきもの。
この横長の模様は、桜の幹の「皮目」だったんだなぁ、と40年ぶりに気づく。
01)
皮目は空気を取り入れるために、まわりより柔らかく、隙間(すきま)が多くできています。
01)
皮目は木の種類によっては縦向きについていたり、樹齢を重ねて外樹皮(コルク層)が厚くなると、割れ目の奥にあったりします。
01)
皮目は幹だけでなく枝にも根にもあって、内部の細胞はここから入った酸素で呼吸しているのです。ですから冬に葉がなくなっても樹木は生きていけます。
01)
夏の風物詩、セミしぐれ。
以前はそういう視点で見ていませんでしたが、セミは樹液を吸うときに、皮目をねらって吸っているのでしょうか?
㋐ねらって吸っている。
㋑ねらって吸っていない。
03)
皮目をねらって管を刺しています。
セミは管を木の表面に軽く当てて、横に移動して管が刺さる場所を探します。柔らかい皮目を使うことで、師管まで管を差し込む労力を減らし、より楽に師管から樹液を吸っているのです。
では、そろそろエンディングといきましょう。
01)
レンコンの煮物です。
このご時世、「せき」や「のど」によいといわれます。
01)
レンコンは蓮根と書きます。
つまり、蓮(ハス)の根です。
01)
レンコンは泥水に埋まっているのでレンコンの細胞は呼吸ができません。
蓮の根はどこから酸素を取り入れているのでしょうか?
少し調べてみましょう。
01)
これは蓮の葉と茎です。
茎を輪切りにしてみましょう。
茎も根と同じように、たくさんの穴があいているのでしょうか?
04)
茎も根と同じように、たくさんの穴があいています。
そして、この穴は根につながっています。
01)
茎の根元からホースで水を穴に流し込むと、葉から勢いよく水が噴き出てきます。
このことから、葉から入った空気は茎を通り根まで運ばれていることがわかります。
つまり、レンコンの穴は「空気の通り道」だったのです。
01)
じつは樹木も、レンコンほど目立ちませんが・・・
葉の気孔・幹の皮目・根の皮目は、木の内側にある細胞と細胞のすきま「細胞間隙(さいぼうかんげき)」とつながっています。
樹木は体内に空気の通り道を持っていたのです。
05)
樹木をざっくり解剖すると・・・
外側から外樹皮、内樹皮(師部+形成層)、木材(木部)の3つになります。
このうち生きて呼吸しているのは内樹皮付近で、厚さ1cmだけ。ここに細胞間隙があり、空気が流れています。
逆に言うと、幹や根は生きているところがここしかないから、ここにだけ皮目から酸素を送り込めばいい。
01)
セミは樹木の「息づかい」を感じているのではないだろうか。
(おしまい)
【出典リスト】
01)Pixabay
02)Wikipedia気孔
04)miyotyaのブログ
05)nonki33
以上、使わせていただきありがとうございました。