サクラとクルミ

桜餅です。

みなさんは葉っぱごと食べますか?

私は香りを楽しみながら葉っぱごといただきます。

 

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塩漬けにしたサクラの葉にはクマリンという成分が含まれ、それが特有の香りを放っています。

 

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桜餅にはオオシマザクラの葉が使われます。それは他のサクラに比べてクマリンが多く含まれ、葉の香りが高いため。

クマリンはバニラに似ている香料として使われますが、抗酸化作用や抗菌作用、抗血液凝集作用があり、適量ならいいのですが、過量摂取にはご用心。殺鼠剤の製造原料でもあります。

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大島桜の花と実。

大島を含む伊豆七島、伊豆半島及び房総半島を原産とするサクラ。他の桜の台木になるほど丈夫な性質を持ち、美しいサトザクラの多くは、これを起源とする。ソメイヨシノの片親でもある。

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これは何の実?

 

実の中から何やらでてきました・・・。

 

はい、これはクルミです。

じつは、クルミのかたい殻(カラ)は果実の一部で、その中の食べる部分だけが種子なのです。このように種子の外側にかたい殻を持っている実のことを核果(かくか)と呼んでいます。ウメやモモなども核果です。

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クルミ餅(くるみゆべし)です。

クルミの種子には脂質が多く、コクがあって美味。また、ビタミンEを始め様々なビタミンやミネラルが豊富に含まれており、非常に栄養価が高い。

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クルミの木とその雌花(中)、雄花(右)。

クルミ(胡桃)は、クルミ科クルミ属の落葉高木の総称。木材としてはウォールナット。原産地はヨーロッパ南西部からアジア西部とされ、北半球の温帯地域に広く分布する。樹高は20mに及ぶ。5月から6月にかけて開花。

クルミ科植物の葉、根、殻および樹皮には、ユグロンという物質が含まれ、多くの植物に対し有毒。ユグロンは、除草剤、染料、インク、食品および化粧品のカラーリング剤としてよく使われる。ユグロンは多くの植食昆虫にも有毒である。

 

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セイタカアワダチソウ(背高泡立草)です。

キク科アキノキリンソウ属の多年草。高さは2mを超えることもある。北アメリカ原産の帰化植物。花は10-11月に咲く。

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同じ時期に黄色い花が咲く、キク科で帰化植物のブタクサ(右)と間違われ、花粉症の原因だと言われるが、まったく別の植物。ブタクサは風媒花だが、セイタカアワダチソウは虫媒花というのがその理由。よく見ると葉の形が違う。

セイタカアワダチソウは薬効があり、北米ではハーブとして使われる。花はハーブティになり、若芽をてんぷらなどにして食べられる。葉はシュンギクをもっと青臭くしたような味で、花は蜜があるので甘く、個性的なハチミツがとれる。

ところが、いいことばかりではなくて、セイタカアワダチソウが侵入すると、先に咲いていたススキなどの在来植物を一掃して、セイタカアワダチソウだけの大群落をつくってしまう、という現象が日本中に起こった。

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そしてこの原因を調べたところ、根から周囲の植物の成長を抑制する物質、cis-DME(シス-デヒドロマトリカリエステル)を出していることがわかった。ただ繁殖力が旺盛なだけでなく化学物質を使ってまわりの植物を育たないようにしていたのだ。

しかし、これには悲しいオチがあって、「cis-DME」の濃度が地中で高くなりすぎると、セイタカアワダチソウ自身の種子に対する強い発芽障害を起こしてしまう。そうなると群落が縮小してもとどおりの植生にもどってしまうのだ。

このように、植物が化学物質を放出することで、他の植物の生長を抑えたり、他の動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりすることを「アレロパシ―」(他感作用)と呼んでいます。

以前から、サクラの木の周りでも、クルミの木の周りでも、植木が育ちにくいと言われていた。その原因の1つがこれだったのである。

サクラにもアレロパシーがあり、葉が散って朽ちることでサクラの周りの地上に「クマリン」が増え、他の植物の発芽抑制、成長阻害をしていたのだ。

クルミにもアレロパシーがあり、根から直接「ユグロン」を放出し、自分の根に近づいてくる他の植物の根の成長を地中で阻害していたのだ。

植物は他の植物と、光や栄養分を奪い合うたたかいをしているだけではなかった。こっそり化学兵器を使っていたのだ!

 

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以前紹介した、ニセアカシアです。マメ科ハリエンジュ属の落葉高木。樹高は20m以上。甘い香りで花からは蜂蜜を取っている有用植物です。下はニセアカシアの実と花のアップ。

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この樹木は外来種で、ものすごい繁殖力で他の在来の樹木を駆逐していました。そこでアレロパシ―物質の有無をしらべてみたのです。果たしてその結果はどうだったでしょうか?

「(-)-カテキン」「ロビネチン」といった植物生育阻害物質を根から出していることが発見されたのです。特に(-)-カテキンの活性が天然物としてあまりに強力なので、アメリカでは天然の除草剤として開発しようと提案されています。

 

さて、ここで問題です。

どちらも日当たりのよい水辺を好み、アレロパシ―を持つ、クルミとニセアカシアがたたかったら、どちらが勝つと思いますか? ただし生育条件は同じとします。

㋐ニセアカシアが勝つ

㋑クルミが勝つ

㋒その他、引き分けなど

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㊧クルミ(在来種のオニグルミ)、 ㊨ニセアカシア

 

大学や研究所の混植実験によると、オニグルミとニセアカシアを混植した区では、対照区にくらべて、ニセアカシアの乾物重量が約50% に低下し、根が壊死を起こしていた。多摩川中流域の調査では、ニセアカシア群落は、イネ科の多年生草本群落やヤナギ類低木群落への侵入が多く、オニグルミが分布する立地には、ニセアカシアが侵入していないことが観察された・・・。クルミ(オニグルミ)の勝ちである。

ただし、クルミも万能ではなく、ユグロンに耐性を持つ樹木には、カエデ 、カバノキ 、ブナなどがある。

樹木や植物のもつアレロパシー物質に注目し、その有無や強弱、耐性や相性を調べることにより、今まで気づかなかったつながりや新しい世界が見えてくる。

「毒をもって毒を制す。」「毒薬変じて薬となる。」

植物農薬、コンパニオンプランツ、フィトンチッド、生物学的環境修復、などへの応用が期待される。

(おしまい)

【出典リスト】

01)Wikipedia桜餅

02)庭木図鑑 植木ペディア

03)Wikipediaゆべし

04)Wikipediaオニグルミ

05)Wikipediaセイタカアワダチソウ

06)Wikipediaブタクサ

07)Wikipediaニセアカシア