ホシガラスです。
漢字で「星鴉」と書きます。
からだの模様が星空のようにみえるので、星鴉と名づけられたといわれています。
日本では北アルプスや南アルプスなどの山岳地帯に住んでいます。
私は若かりし頃、山男だったのですがホシガラスを見た記憶がありません・・・。
そのかわり、この鳥なら見たことがあります。
01)
ライチョウです。
漢字で「雷鳥」と書き、国の特別天然記念物。
カミナリの鳴るような空模様の時に好んで活動する鳥、から「雷鳥」と名づけられたともいわれています。
この鳥は保護色で、冬になると羽毛が雪のように白くなります。
では問題です。
この2つの鳥、「ホシガラス」と「ライチョウ」に共通する樹木は何でしょう?
ヒントは先ほどの画像にあったのです。
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02)
ハイマツです。
マツ科マツ属の常緑針葉樹。
ホシガラスがくわえていたのは、ハイマツの実(球果、マツボックリ)だったのです。
ホシガラスはその中の種子を食べます。下はホシガラスに食されたハイマツの球果と種子。
02)
ホシガラスは余ったのを地下に蓄えておく習性があるので、結果、種子の散布に大いに役だっているというわけ。
一方、ライチョウのバックに写っていたのはハイマツ林です。
ライチョウはハイマツの芽や葉などを食べます。そして、ハイマツ林は敵から身を隠す場所になっています。
さて、ここで問題。
ハイマツの葉は次のうちどちらでしょう?
03)
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答えは㊨です。
マツ科マツ属の中でも、ハイマツはゴヨウマツ、チョウセンゴヨウなどと同じ仲間(Strobus 亜属)で、針葉は「5枚組」です。下はゴヨウマツの葉。
04)
ゴヨウマツは盆栽にも使われる品種です。下は私の好きな樹形の「吹き流し」。
一方、問題で㊧にあった葉はクロマツです。
同じマツ属でも、おなじみのクロマツ、アカマツやリュウキュウマツなどは別の仲間(Pinus 亜属)で、針葉は「2枚組」です。下はアカマツの葉。
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ふたたび、㊧クロマツ、㊨ハイマツの比較。
葉がいくつに分かれているか、よーく見てください。
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ところで、ハイマツは漢字で「這松」と書きます。地面をはうように生えるから這い松(はいまつ)です。
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私は長年、山の高いところ(high)に生えるからハイマツだと思っていました・・・。
02)
北アルプス・白馬乗鞍岳(標高2469m)直下のハイマツ。
なぜかというと、ハイマツより高いところは樹木(木本)がすっかりなくなるのです。スパーっと開けた感じ。あとは頂上を目指すだけ。
中部山岳ではだいたい標高2500mくらいでしょうか。岩と砂だけの世界に変わるところです。ここを「森林限界(高木限界)」といいます。
ここから上は低温と乾燥のために森林を形成できないのです。ここを山岳地帯では「高山帯」と呼んでいます。
南アルプス・小河内岳(標高2802m)直下のハイマツ。
このキビシイ環境にハイマツが適応したわけです。
ハイマツの生える森林限界は北へ行くほど標高が下がってきます。東北の山では1500m、北海道大雪山では1000m、利尻島では500m、千島列島300m・・・、となっていき、どこかで森林限界が0mになります。
ここから先は平地でも森林ができない。どこにも樹木がない。この地帯を地球では「ツンドラ(凍原)」といいます。
ツンドラは地下に永久凍土が広がる降水量の少ない荒涼とした地域のことです。ツンデレではありません。
ツンドラはシベリアとかアラスカへ行くとあります。下はアラスカのツンドラ。
このツンドラ境界にもハイマツは生えています。
シベリア北東部に自生するハイマツ。
02)
なんと、ここのハイマツは直立していて、這っていません。
なぜなんでしょう?
その昔、氷河期には日本にも氷河が来ていて、ツンドラ地帯もあった。そして、日本の平地にも直立したハイマツ林が広がっていた。
その後、間氷期になり気温の上昇とともにツンドラ地帯が北上していく。取り残されたハイマツは風の強い高山帯に生き延び、適応して今のような這う松になった・・・。
ハイマツは、ハイパフォーマンスなマツなのです。
(おしまい)
【出典リスト】
03)風 信
06)ナンでも図鑑
07)木々の移ろい