みなさん、こんにちは。
「庭のお悩み相談」は、普段、お客様の御宅で剪定など定期管理にあっている職人が、庭や庭木に関するお悩みに答えたり、職人ならではの庭の楽しみ方をお伝えしていきます。
今回の担当は松本さんです。
テーマは庭木の大敵、虫です。その中でも、今回は「カイガラムシ」について。

庭木を眺めていて枝や幹に「あ!虫!」と発見したことはありませんか。
虫の発見はうれしい事では無いですが、薬剤散布で対処する前に虫のことをよく知ろう。
松本さんから教えてもらいました。

(松本)
カイガラムシは百日紅や洋ラン、サボテン、果樹など、ほとんどの庭木についてしまう厄介な虫です。
セミの親戚にあたる昆虫の一種ですが、400種類以上いるそうです。
付いてしまうとなかなか居なくならず、庭木が枯れてしまうこともあるので、注意が必要です。

インターネットから松本さんが見つけてくれたカイガラムシの写真を確認します。
枝についた茶色の硬そうな粒粒がギッシリです。貝殻のように硬い甲羅の背中に見えます。

生成AIで作成しましたカイガラムシの画像です

(松本)
孵化したての幼虫は足があって移動するのですが、成虫になると足が退化し、枝や幹に固定して生活するそうです。

固定して生活。その名の通り貝のような生態ですね。

(松本)
カイガラムシは、枝や幹に固定して寄生した植物から汁を吸って生活しています。

寄生された樹はやがて衰弱していきます。
カイガラムシが厄介なのは、枝についてしまうと、手でなかなか取れなくなってしまうことです。

タワシで取ろうとしても難しかったり、歯ブラシで取ろうとしたことありました。
あまり硬いと、手で取ろうとすると逆に枝を傷つけてしまうのが植木にとって良くないんです。

虫を発見したら、触るのが気持ち悪くなければ、何かしらの方法でどうにか取ろうとしてしまいそうです。それがかえって、庭木には良くないのでしょうか。

(松本)
植木にとって表面の皮が一番大事なんです。中の詰まっている部分(=幹)では無いんです。

植木の皮は、人間でいえば血管にあたります。山には、幹がえぐれて皮だけで生きている木がたくさんありますよ。

中の内側の部分ではなく、むき出しになっている表面部分の皮が一番大事だとは、まったく知りませんでした!
皮をそこまで大事と思っていない方も多いのではないでしょうか。
皮だけでも生きているということは、皮が傷つくと、木が弱ってしまったり枯れてしまうということですね。

(松本)
皮が一番大事なので、自分達が剪定するときも切り口を大事にしています。
カイガラムシが良くないのは、皮の汁を吸いつくしてしまう点です。木の体力が落ちて行ってしまいます。
活動の休眠期もありますが、少し残っていると復活してしまいます。根気をもって完全に取らないといけません。悪化するとスス病という病気も進行してしまいます。

実際のカイガラムシ

ついてしまったらなかなか手で取りきれないカイガラムシ。枝や幹に自分を固定させて、皮から木の栄養を吸いつくすことから始まる被害は、どれだけ深刻かと思います。対応策はどうしたらいいでしょうか。

(松本)
カイガラムシがついてしまったらスミチオン乳剤などの薬剤を散布して対応できます。
ほとんどの庭木には虫がつきますが、虫がついてしまう木は、風通しが悪くボサボサとしていて、光が当っていないことが多いです。
適度に剪定をして風通しをよくし光があたるようにすることが、なによりも虫への対策になります。

薬剤散布は健康な木にも影響も及ぼしてしまいます。虫がついてしまったから駆除する、という方法だけでなく、虫がつきにくい状態をなるべく維持して対策するのが一番とも言えますね。

(松本)
竹内庭苑では「虫がつかないように切ってくる」というのを、皆で目指して定期管理にあたっています。一つの木についた虫が、庭の植木の全体を枯らせてしまう場合もあります。せっかく大事にしてきた庭なのに、残念なことです。

「なぜ枯れ始めたのかな?」を考える入り口が虫だと思います。
虫がついたことを無視しないで、庭に興味をもっていただきたいな、と思います。

「虫がつくから庭は嫌だな」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「そんなこと言わないで、木をかわいがりましょう(苦笑)」って自分は伝えたいです。
自然に虫がいるのは当たりまえです。桜の木にも虫はいます。
虫はつくけれど花もきれい、それが自然だと思います。虫がつく一方で、一瞬のきれいさが心を動かし感動するんじゃないかな、と。

虫だけに、無視はできない。いかがでしたか。
無視をせずにちょっと考えてみることは「どうやって駆除するか?」ではなく、「なんで虫がついたのかな?」という点です。
咲いた花に感動するのと同じように、虫が寄り付かないように気にかける。

竹内庭苑は、みなさんと一緒に向き合いながら、庭を楽しんで行きたいと思います。