みなさん、こんにちは
2023年も 竹内庭苑お仕事話し 「庭師の現場から」 をどうぞよろしくお願いいたします。
第3回目の今月は、竹内庭苑入社3年目、名木さんです。
-今年、入社3年目となるフレッシュな名木さん。前職は新聞配達の会社で主任を任され約20年でしたが、お店が閉店するタイミングで、これまでとは違う仕事をしたいと思われていたそうですね。
(名木)
手に職をつけたい、歳をとっても続けられる仕事をしたいと思いました。体力に自信はありましたし。
昨年41歳になりましたが、動けるうちに動ける仕事をやろうと考えていたところ、竹内庭苑の求人に出会いました。新聞配達時のお客さんで大きな造園屋さんがいらっしゃり、それまでも造園の話しを聴くことがあったのでチャレンジしました。
ー実際に就いてみて、造園会社の仕事は、いかがでしたか。庭に入って松を剪定する技術的なイメージを持っていたそうですが。
(名木)
いざ入社してみると、社長から「公共工事を担当してください」と任されるようになりました。「こういう仕事も、やるのか」とイメージが違いました。造園自体が多岐にわたり、幅広く色んなことが出来るのか、というのが驚きでした。
今は公共工事をメインで担当させてもらっています。今日も、海岸の砂防林での仕事でした。
―個人の御宅の庭で脚立に登って剪定バサミを入れるのとは、仕事の内容に違いもあるのでしょうか。
(名木)
公共工事には資料作成が必須です。作成した施工計画書に基づいて工事を開始、進行、計画書通りに工事を行ったか立ち会いでチェックを受け、最後は竣工書にまとめて、それを元に検査を受けて合格をいただき、無事に完了となります。
「こんなに事務仕事があるの?」と驚きましたが、自分はパソコンの扱いに慣れていることもあって、入社以来、公共工事が担当です。
「安全作業」の項目などは特に細かく決められています。個人庭も同じですが、労働災害が一番あってはいけないことです。チェーンソーなど使う道具で記載内容が変わってきます。
施工計画書に起こすことで、自分達の作業時の安全意識も高まります。
-「公共工事」というと具体的にどんな現場がありましたか。信号機を邪魔するほどに伸びた街路樹を伐採するとか、見通しが悪くなった道路の植え込みを剪定するようなイメージがあります。
(名木)
今日は海岸の砂防林の現場でした。茅ヶ崎海岸には砂除けの松が植えられていますが、病気にならないようにと業者さんが薬を打ちます。今日は、砂防林の中で作業が行いやすいように、松の下に生えている草を除伐する仕事でした。
砂防林には松だけでなく広葉樹も植えられています。上に舞っている風は松が防ぎ、下を流れる風は広葉樹が防ぎます。広葉樹を残しすぎると松が死んでしまうし、枯れた松の枝を落としてあげないとそこから病気になってしまいます。
自分たち造園屋は、松が病気にならないように手入れをする役割です。砂防林が無かった時代、海岸の砂は道路が通れなくなるほどに飛んできたと聴きました。
-昔は、それほどに酷かったとは、驚きです。海の近くに暮らす人たちにとっては、風が強い日に飛んで来る砂は洗濯物を汚しますし、家の中のものをザラザラにしてしまうこともあります。造園屋さんによって海岸の砂防林が守られ、暮らしで不快に感じることも無いと思うと、まさに公共工事は無くてはならないものだなと、思います。
竹内庭苑では個人庭やマンションの管理に限らず、このような公共工事を年間通して数多く担当させていただいております。
-公共工事で大事な点というと、どんな点がありますか
(名木)
「この工事は何を目的としているか」だと思います。色々な工事がありますので。
砂防林の管理は暴風災害を防ぐために必要不可欠ですし、134号線の海岸整備の公共工事は歩道にまで伸びすぎた生垣を調整して、人が2人3人と並んでも通ることができるようにするためです。
―あの歩道は、草が伸びすぎて通りづらいと困りますね。生活の中に草木があることで、ちょっとした不便や不快を感じることって、確かにありますね。
(名木)
河川敷の除草は、伸びた草にゴミが絡まって川を堰き止めてしまうのを防ぐために行います。川の中腹にあるポンプの掘削作業は、そこから田んぼに水がうまく流れるようにするためです。排水路の除草は、草が生え続けることで排水ができなくなるのを防ぐためです。
この工事は何のために行うか、何を目的としているか意識して、作業にあたりますし、担当者にも説明します。公共は、「放置しておくと、生活に支障が出るから、やる」っていう感じです。目的をもって、半年一年かけて工事を担当するので、無事に完了して最後に監督さんから「合格」をもらうと達成感があります。
―今は現実的に困っていないとしても、河川敷や排水路などは、そのまま手をつけられないことで、思いもよらぬ影響を受けそうだなと思いました。
個人庭との違いがあるとしたら、どんな点でしょうか。
(名木)
個人庭も「生活に支障が出るから」という点では同じだと思います。伸びすぎて日当たりが悪くなってしまったとか、庭なのに、うっそうとして出られないとか。
それらに付随して、「やるならキレイにしましょう」という点も出てくるのが個人庭だと。見栄えよく、きれいに。人が生活しやすくすることを大事にするというのは、公共も個人庭も同じだと思います。
-造園の職人というと、今までは、剪定の技術や美しさを実現する芸術的感性のことを考えていました。公共工事の内容を知って、木や草といった自然の力と人の暮らしを調和させることが大切で、造園業はとても重要な役割を果たしているなと今日は思いました。
(名木)
造園の仕事について2年が経ちましたが、とても奥深いです。深すぎて未だ分からないというのが正直なところです。
造園の技術的なことについては、基本は一緒でも、手がける人のセンスによって違いが出るのが面白いと思います。菅野さんに、よく言われるのが「自然な形にする」ということ。木が自然な形で広がって丸くなったような形に、ハサミを使って仕上げていくのです。社長や菅野さんが手がけた木は、自然とフワッと育っているようで、「形はキレイだけれど、これで伐ったのかな」と感じるように、伐った風に見えません。
自分が伐って行くと人工的な感じになってしまいます。なぜ不自然なのか、は、まだ分からず難しいですね。10年で一人前と言われるのは、これだけ奥深いからだと思います。
―高度な技術が求められそうですね。奥深さも相まって、高みを目指す世界にゴールは無さそうですね。
(名木)
菅野さんからは、自然の木や山の木を、まず見た方がいいよとアドバイスをもらいます。「自然って、こうなっているんだ。こういう風に伸びているから自然に見えるんだな、っていうのが分かるから」と。経験の年数だと思いますし、自分のセンスは、そうやって磨いていくしかないと思います。
―今の名木さんの目標を立てるとしたら、どのような内容でしょうか。
(名木)
自分の今できることは、資格をとって公共工事を担当できるようにすることだと思っています。必要な資格を取得して、規模の大きな工事を担当できるようになりたいと思います。施工管理や技能士の資格を持っている人が現場に入ると動きも違いますし安全性も全然変わってきます。
手伝いで出向く他の会社さんとの仕事の際でも、資格を持っていることで「このレベルのことはできます」と証明にもなるので大事だと思います。
―資格の保有は、関わる方に向けての品質保証にもつながりますしね。造園という新しい業種に根を下ろした今、造園の仕事の魅力をお子さんや子どもたちに伝えるとしたら、名木さんは、どう考えますか
(名木)
誇れる仕事ではあるのかな、と思います。体を動かして自然にも触れられて、生活に必要な人の助けにもなることもできる。木は一本一本成長が違いますし、同じ品種でも特徴が違います。面白いし奥が深い、きれいに伐採できた時の達成感もあります。やることは尽きませんし、やりがいがありますね。自分の中では、造園は、子どもが「やりたい」と言うのであれば勧められる仕事です。(おしまい)