みなさん、こんにちは
11月より、竹内庭苑お仕事話しは、新シリーズが始まっています。
タイトルは「庭師の現場から」

竹内庭苑では、社長のほか、現在16名の庭師によって、現場を担当させていただいております。みな、年齢も違えば、性別も違い、造園職人としての経験年数も様々です。新卒で造園業界に入り技術を磨く者もいれば、全くの異業種から参入し、今までの経験を活かしながら造園業で新たなキャリアを築いている者もおります。
共通して言えるのは、みな、「気もちのいい人たちだ」ということです。造園業務になじみのない広報担当の自分にも、話す機会があると実に気もちよく接してくれます。自然を相手にしている人特有の空気感があるのかもしれませんし、竹内庭苑特有の組織風土かもしれません。

新シリーズでは、そんな、竹内庭苑の庭師の一人ひとりにスポットを当てていきます。
第2回目の今月は、竹内庭苑入社8年目、松本さんです。

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―松本さんは前職が介護職だったそうですね。造園の仕事に就かれた経緯を教えてください。

(松本)
栃木県生まれです。実家の庭が広く、親が手入れをしていました。その姿を見て、自分で出来たらいいなと思ったのが造園の仕事に興味をもったきっかけです。体を動かす仕事をしたいとも思っていました。

-広い庭のある家、憧れます。子どもの頃から身近なところに自然があったんですね。

(松本)
庭のモチノキにのぼり、彫刻刀でじぶんの名前を掘ってみたり、親が植えた植木を知らないで抜いてしまったり。庭はカナブンが多く、最初はカブトムシだと思って捕まえたら、大きさも違うし色もテラテラのエメラルドグリーンで、衝撃でした。

-職人になる前から木に登っていたんですね。造園の仕事を始めた後、ご実家の庭の手入れをされたことはありますか。

(松本)
入社4年目の頃、初めて実家の植木の刈り込んでみました。実家に帰るのはとても暑い時期(お盆)と、とても寒い時期(お正月)で、それまではなかなか気が進みませんでしたが、その時は「やってみよう」と思って始めました

―出来栄えは、どうでしたか?

(松本)
自己満足だったな、と思います。「もうちょっと何かできたのでは」と思いました。大きな物だったので、一つやって終わりにしてしまいました。「一個だけかよ」っていうような。お客さんの現場だったら満遍なくやっただろうに。「もうちょっとできたんじゃないかな」という気もちです。怠けの気持ちがありました。

-ご家族は心の中で喜ばれたと思いますよ。再度、挑戦する機会があったら、どんな風に今度は仕上げたいですか

(松本)
広い庭なので、ごちゃごちゃした一角をキレイにしたいです。金木犀やツゲ、モチ、マホニア、、、色々と植わっているので、時間をかけて丁寧に手入れをしてみたいです。

-初めて手入れをした時から4年が過ぎ技術も向上していると思います。楽しみですね。
今現在の、松本さんの担当している仕事を教えてください。

(松本)
担当のマンション3軒の管理もありますが、最近では国道134号線の草刈と刈り込みを行う公共工事の責任者を務めました。依頼者の土木事務所の方とのやりとり、現場の状況把握、外部のガードマンの手配、竣工書の作成などを担当しました。
歩道と中央分離帯が現場ですが、同時進行で行うと(工事車両や止める関係で)車道が狭くなってしまいます。歩道を3~5人の職人で仕上げたあと、折り返して中央へ、というような流れで、18日かかって終了しました。


-実際の現場での作業だけではなく、どのように進行して行くかの段取り・計画や、外部の方とのやりとりも含め、現場が機能するための条件を整えることも行うのですね。

(松本)
現場作業では無いことも担当します。個人庭工事の外溝屋さんや設計士さんから頼まれて、植木を発注すること、注文の植木が届き工事で植える、ということもあります。やりとり業務も多いです。

様々に担当の仕事があると思いますが、これまでで印象深かった仕事や喜ばれた仕事はなんでしょうか。

(松本)
「受け答えややりとりが丁寧だった」とお客さんから声が伝わってくるのはうれしいです。暗い状態よりは明るく接した方がいいと思っていますし、聴かれたことはできるだけ答えられるようにと思って準備しています

-私たちは庭木に関する知識が無いので、教えてもらえると有難いです。自分でも頑張って調べれば分かることなのかもしれませんが、目の前の専門家に実物を一緒に眺めながら教えてもらえるのが一番分かりやすいです。丁寧に対応してもらえるのは安心です。

-造園の仕事について、これまでと変わったことは何かありますか。

(松本)
肩幅が大きくなった、というような体の変化もありますが、覚えることや調べることが増えたな、と思います。現場でも、お客さんから聴かれることがあるので。日陰に植えるものが日向に植わっていると葉が焼けてしまいダメになってしまうので移動を提案することや、肥料をあげた方がいいですよとアドバイスをしたり、大きくなったものは、この部分を抜いたほうがいいですと、助言をしたりです。

-様々な事を知っている必要がありますね。庭木についての知識は、どうやって覚えていったのでしょうか。

(松本)
教えられてきたというのもありますが、現場を見て覚えてきました。たとえば、「日陰でも元気なあの木は、『アオキ』で、日陰に植えられても育つ種類だ」、というように、現場の中で覚えてきました。マンションも個人庭も似たような木が植えられることが多かったのですが、最近は特別な木が植えられていることもあり、新しく覚える必要も出てきました。

-たしかに、住宅街でも珍しい木が植わっているお庭を目にするようになりましたね。

(松本)
クリスマスツリーとして使いたいのでプンゲンストウヒを植えている、というように施主様一人ひとりの好みが違う場合もあります。事前に調べて、なにか聴かれたら答えられるようにと準備をしています。
造園の仕事に就いて変わったことでいえば、事前に調べることの他に、習慣化されていく部分が出来たことです。施工や現場に必要な資格をとるために勉強することが増えました。

-造園の技術の資格試験は時間内に完成させる実技もあり、とても大変と以前に田口さんのインタビューでお聴きしました。

(松本)
2年目か3年目の頃に、2級技能士の資格取得を目指して、結束や綾掛けの練習をしました。社長からは「1分以内でできるように」「目をつむってでもできるように」と言われて、仕事が終わった後に、社長の家の庭で夜、垣根をつくる練習をしました。最初は気が進まない部分もありましたが、やっていくうちに「今日も行かなきゃ」と思うようになり練習が習慣化されていきました。日曜日は置き場で猛練習でした。
昨年は何回目かの受験でしたが、2級施工管理士を取得できました。公共工事を担当する際に必要な資格です。

-ご自身の日々の練習や勉強、現場での経験、それらが結びついて現場を担当することができるし、お客様にも喜んでいただける技術や知識が身についていくということですね。大事なことです。
松本さんが考える、これからのご自身の課題や取り組む点は、どのような点でしょうか。

(松本)
技術の面でもまだまだですが、事務仕事の場面などで要領が良くない点を直して行こうと思います。今、やることの見極めが出来ていないのだと思いますが、何かをやっていても別のことにも手をつけてしまいがちです。優先度が違うようなので、他の人を手本に自分も改善させたいです。
お客さんへの丁寧な対応やアドバイスができるようになるには、普段からの受け答えができるようになる必要もあります。話しをするのが苦手ですが、食い違ったり途切れたりすることが無いように、と思っています。

-造園業は庭木のような自然を相手にするだけでなく、お客さんや他社の方など人を相手にする仕事でもある、ということを松本さんのお話しからは改めて気づかされました。造園職人としての、松本さんにとっての理想の姿を教えてください。

(松本)
社長のように、なれたらいいと思っています。木を見て(どの部分を、どう伐ったらいいか)伐採剪定の計算が早いですし、考えて直ぐに行動できるところを目指したいです。経験があるのと学んでいるからだと思います。外出先でも、木がどう伐られているか、よく見ているのだと思います。

自分も基本、見るようにはしていますが、濃さや形や、どんな木が植わっているのかを見ることが多いです。社長が言うのは、どのような伐り方をしているか、をよく見なさい、ということだと思います。木にダメージを与えない伐り方を社長はいつもイメージしている、自分も同じようにできるようになりたいです。

-いかがでしたか。木は伸びたところを伐れば良いというものではありません。木の本来の特性を生かした手入れの仕方があります。技術だけでなく正確な知識も重要な造園の世界、そして木の向こう側には、人(=施主様や依頼者の方)がいる。勉強熱心な松本さんの言葉から、造園が相手としているのは誰か?を考えさせられました。
次回も、どうぞお楽しみに!